海外の変形性股関節症治療の現状

変形性股関節症と診断されたとき、
「海外ではどんな治療が主流なのだろう?」と気になる方も多いのではないでしょうか。

世界的に見ても、治療の基本方針は日本と大きく変わりません。
ただし、保存療法と手術の実施割合や方針の違いには国ごとの特徴があります。


保存療法が第一選択という国際的コンセンサス

海外のガイドライン(OARSIなど)では、
「まずは保存療法を行う」ことが明確に推奨されています。

保存療法には、次のような方法が含まれます。

  • 運動療法(筋力強化、可動域改善トレーニング)
  • 体重管理
  • 鎮痛薬や消炎薬の使用
  • 注射療法(ヒアルロン酸など)
  • 生活動作の指導・改善

これらはすべて、手術を検討する前に行うべき基本的な治療とされています。


人工股関節置換術は世界的に増加傾向

一方で保存療法でも痛みや機能障害が改善しない場合、
人工股関節置換術(THA)が選択されます。

OECD(経済協力開発機構)の統計によると、
国によって差はありますが、年間で人口10万人あたり約170件前後のペースで手術が行われています。

スイス、ドイツ、北欧諸国などは特に手術件数が多く、
一方で南米や発展途上国ではまだ件数が少ない傾向です。

この背景には、
医療アクセスの違いや、保険制度、文化的要因などが関係しています。


「保存療法を十分に行わず手術へ」の課題

近年の研究では、
手術を受ける患者の多くが「十分な保存療法を経ていない」という報告が出ています。

理想的には、3ヶ月以上の運動療法や生活指導を行い、
改善が見られない場合に初めて手術を検討するのが望ましいとされています。

しかし現実には、
「痛みが強い → すぐに手術を選択」という流れも少なくありません。

これは日本でも共通する課題であり、
保存療法の質と継続期間を見直す必要があると考えられています。


国によるアプローチの違い

イギリス・北欧などの公的医療圏

待機期間が長く、まず保存療法を徹底する傾向があります。
医療費の観点からも、手術は慎重に検討されるケースが多いです。

アメリカ・オーストラリアなどの民間医療圏

アクセスが早く、希望すれば比較的短期間で手術を受けることができます。
その一方で、保存療法の介入が十分でないことも課題として指摘されています。

このように医療制度によって治療の流れや優先順位は異なりますが、
どの国でも共通しているのは
「まず保存療法を行う」「手術後も運動・リハビリを継続する」
という基本方針です。


日本でも進む“段階的治療”の考え方

日本でも、ここ数年で保存療法の重要性が再評価されています。
運動療法やリハビリを重視する整形外科・治療院が増え、
筋肉・姿勢・呼吸などを含めた全身的なアプローチが広がっています。

同時に、手術技術も進歩しており、
早期退院や日帰り手術、ロボット支援手術といった選択肢も登場しています。

これからの時代は、
「保存療法と手術の二者択一」ではなく、
段階的かつ柔軟に判断していく治療が主流になっていくでしょう。


まとめ|焦らず段階を踏んでいくことが大切

海外の変形性股関節症治療は、
どの国でも「保存療法 → 手術」という流れが基本です。

焦らずに、自分の体の反応を見ながら、
段階的に治療を進めていくことが大切です。

保存療法に取り組んでいる方は、
それがまさに“世界標準”の第一歩です。