これまでの記事では、「巡り」や「流れ」といった言葉を使いながら、身体全体のつながりについてお伝えしてきました。
しかし実際の身体の中では、その流れはひとつではありません。
むしろ、性質の異なる複数の流れが同時に存在し、それぞれ独立しながらも影響し合っています。
今回ご紹介するのは、その中でも特に重要な
「3つの静脈系」=3つの流れという視点です。
これを少しイメージしやすくするために、ここでは「3つの川」としてお話ししていきます。
① 全身をめぐる「大静脈という川」
ひとつ目は、全身を巡る大きな流れ。
いわゆる「大静脈系」です。
筋肉や皮膚、関節など、身体のあらゆる場所を巡った血液が心臓へと戻っていく、最もイメージしやすい流れです。
この川は、いわば“本流”。
冷えやむくみ、だるさといった症状は、この流れの影響を強く受けます。
ただし、この本流だけを整えようとしても、うまくいかないケースがあるのは次の2つの川が関係しているためです。
② 内臓を通る「門脈という川」
ふたつ目は少し特殊な流れである「門脈系」です。
これは、胃や腸などの消化器を通った血液が一度肝臓に集められるというルートを持っています。
いわば、“内臓のための川”。
この流れが滞ると単なる消化不良だけでなく、
・身体の重だるさ
・慢性的な炎症傾向
・原因のはっきりしない不調
といった形で現れることがあります。
自己免疫疾患や膠原病の方に見られる全身症状も、この「門脈の流れ」が関与しているケースは少なくありません。
③ 背骨の中を通る「椎骨静脈という川」
そして3つ目が、「椎骨静脈系」です。
これは背骨の中、いわば“身体の奥”を流れる静脈で脳や神経系と深く関わっています。
この流れの特徴は他の静脈と違い「弁が少ない(またはない)」という点です。
つまり、圧の影響を受けやすく、流れが変化しやすい。
そのため、
・神経の興奮や過敏さ
・原因不明の痛みやこわばり
・自律神経の乱れ
といった症状と関係している可能性があります。
パーキンソン病などの神経系の症状を考える上でも非常に重要な視点になります。
3つの川は「別々に流れている」
ここで大切なのは、この3つの川は単に役割が違うだけでなく、構造的にもある程度独立しているという点です。
つまり、
ひとつの流れが良くなっても、
他の流れが滞っていれば、全体としては回復しきらない。
逆に言えば、
どこにアプローチするかによって、身体の反応は大きく変わる、ということでもあります。
なぜ「局所的なケア」では変化が限定的なのか
肩がつらいから肩をほぐす。
腰が重いから腰をマッサージする。
もちろん、それで楽になることもあります。
しかし、その変化が長続きしない場合、
実際にはその部位ではなく、
別の「川」に原因がある可能性があります。
例えば、
・内臓由来の流れ(門脈)
・神経系に関わる流れ(椎骨静脈)
こうした部分に変化がないままでは本質的な改善にはつながりにくいのです。
施術で見ているのは「どの川が影響しているか」
当院の施術では単に硬さや痛みのある場所だけでなく、
「どの流れが関与しているのか」
という視点を大切にしています。
ある方は、内臓の流れに反応し、
ある方は、神経系の流れに変化が出やすい。
それぞれの状態に合わせて関わっていくことで、
身体は自然とバランスを取り戻していきます。
それは、何かを強く変えるというよりも、
もともと持っている「流れる力」が戻ってくるような感覚です。
まとめ ― 「流れの違い」を知ることが第一歩
身体は、ひとつの単純な構造ではなく、
いくつもの流れが重なり合って成り立っています。
その中でも「3つの川」という視点は、
・なぜ症状が複雑に見えるのか
・なぜ改善に時間がかかるのか
を理解するための、大きなヒントになります。