はじめに
パニック障害の代表的な症状といえば、「突然息が苦しくなる」「心臓が激しく鼓動する」などが挙げられます。
その中でもめまいや動悸は、多くの方が強い不安を感じる症状です。
実際に「脳や耳の病気かもしれない」「心臓に問題があるのでは」と考え、内科や耳鼻科を何件も受診した末にようやくパニック障害と診断されるケースは少なくありません。
この記事ではパニック障害でめまいや動悸が起こる理由と、その仕組み・対策について分かりやすく解説します。
なぜパニック障害でめまいや動悸が起こるのか
1. 自律神経の急激な変化
パニック発作は、交感神経が突然優位になることで起こります。
交感神経は「戦うか逃げるか」の反応を司る神経で、危険を察知すると心拍数を上げ、血圧を上昇させ、筋肉に血液を集中させます。
その結果、脳や内耳への血流が一時的に変化し、ふらつきや回転性のめまいが生じることがあります。
また、血流の再分配により手足が冷たくなったり、顔面が蒼白になることもあります。
2. 過換気による血液ガスの変化
パニック発作時は「息ができない」と感じ、呼吸が速く浅くなります。
これを**過換気(かかんき)**といい、体内の二酸化炭素(CO₂)が急激に減少します。
CO₂が少なくなると脳の血管が収縮し、脳への血流が減り、頭がふわっとする・視界がぼやける・手足がしびれるといった症状が現れます。
実際には酸素は十分足りていても、この血液ガスのバランスの乱れが「息苦しさ」や「めまい」の原因になるのです。
3. 動悸のメカニズム
交感神経が優位になると、副腎からアドレナリンが分泌されます。
このホルモンは心臓の拍動を強く・速くし、血圧を上げます。
結果として、胸の奥で「ドクドク」「バクバク」と感じる動悸が生じます。
この動悸は心臓病と混同されやすく、不安感をさらに増幅させます。
不安が強まると、交感神経がさらに刺激され、動悸が悪化するという悪循環に陥ることもあります。
めまい・動悸が悪化しやすい条件
パニック障害の症状は、以下のような条件で強く出やすくなります。
- 睡眠不足や過労:自律神経の回復が間に合わず、交感神経が過敏になる
- カフェインやアルコールの摂取:心拍数や血圧が上がりやすくなる
- 高温多湿や換気の悪い空間:体温調節が難しくなり、呼吸が浅くなる
- 強いストレスや緊張:脳が「危険」と判断しやすくなる
対策とセルフケア
1. 呼吸法で落ち着く
- 4秒吸う → 6秒吐くを意識し、呼吸のペースをゆっくりにする
- 肩ではなくお腹を膨らませる腹式呼吸を行う
この方法は二酸化炭素濃度を安定させ、めまいや息苦しさを和らげます。
2. 視線を安定させる
- 周囲が揺れて見える時は動いていない物体(壁や柱)をじっと見る
- 目を閉じて頭を少し下げることで内耳の負担を減らすことも有効です
3. 足の筋肉を動かす
- つま先立ちやふくらはぎのストレッチで下半身の血流を促進
- 血液が脳に戻りやすくなり、立ちくらみやふらつきが軽減します
4. 発作後は回復の時間を取る
- 水分を摂り、静かな場所で休憩
- 自分の体が落ち着く時間を意識的に確保することが大切です
まとめ
パニック障害で起こるめまいや動悸は、ほとんどの場合、自律神経の急激な変化や呼吸の乱れによって生じます。
これらは命に関わる危険な症状ではないものの、本人にとっては強い恐怖や不安を伴います。
「なぜ起こるのか」を知ることは、不安を減らす第一歩です。
また、呼吸法や視線の安定、足の運動といった簡単なセルフケアを取り入れることで、発作時のつらさを和らげることが可能です。
知識と対策を持ち、少しずつ安心感を積み重ねながら、自分の体との付き合い方を整えていきましょう。