はじめに
膝や股関節が痛いと、病院で「軟骨がすり減っているからですね」と説明されることがよくあります。
しかし、本当に「軟骨=痛みの原因」なのでしょうか?最新の医学的知見を踏まえて解説します。
軟骨には神経がない
関節を覆う「関節軟骨」は、実は血管も神経も通っていない組織です。
そのため、軟骨自体が「痛い」と感じることはできません。
つまり、軟骨がすり減ること自体が痛みを直接引き起こすわけではないのです。
痛みの原因はどこから?
膝や股関節の痛みは周囲の次のような組織から発生します。
- 滑膜:炎症を起こしやすい膜
- 関節包や靱帯:神経が豊富に分布
- 骨の内部(骨髄):血流や圧力の変化に敏感
- 筋肉や腱:過緊張や炎症による痛み
これらの組織は神経が通っているため、軟骨の変化よりもむしろ痛みの直接的な原因となります。
画像と症状は一致しない
研究によれば、X線やMRIで「軟骨のすり減り」が見つかっても痛みのない人がたくさんいます。
逆に、画像では軽度の変化しかないのに強い痛みを訴える人も少なくありません。
このことからも「軟骨=痛み」という単純な構図は成り立たないのです。
最新の研究が示すこと
近年の研究(Osteoarthritis and Cartilage誌など)では、膝や股関節の痛みの主な要因は以下とされています。
- 滑膜炎(関節内の炎症)
- **骨髄病変(Bone marrow lesion)**による血流や圧の異常
- 関節周囲の筋肉や靱帯の不均衡
軟骨のすり減りは関節変形の一因ではありますが直接の痛みの原因ではなく「間接的な要素」と考えられています。
まとめ
- 軟骨は神経がないため、痛みを直接感じることはできない
- 実際の痛みは滑膜や骨、筋肉などから生じる
- 画像所見と痛みは必ずしも一致しない
- 最新の科学では「炎症」や「骨髄の変化」が注目されている
「軟骨がすり減ったから痛い」という説明はシンプルですが、正確ではありません。
大切なのは、炎症や血流、筋肉のバランスなど多面的に考えることです。