「毎日、どれくらい歩いていますか?」
普段はあまり意識しないかもしれませんが、“歩く”という動作は高齢期の健康において何よりも大切なリハビリです。
今回は小規模デイサービスで機能訓練指導員としてサポートに入った経験から高齢者にとって「歩くこと」がどれほど大切かを改めて考えさせられたことをお伝えします。
なぜデイサービスでサポートしたのか
ご縁があり一軒家を利用したアットホームな小規模デイサービスにサポートに入りました。
利用者さんは70代から90代まで幅広く、要介護度も軽度から重度までさまざまです。
今回サポートに入った理由は、「高齢者の歩行機能を確認・サポートしたい」という思いからです。
その施設には常勤の理学療法士がいないため、日中はテレビを見て過ごすことが多く、体操も上半身を軽く動かす程度。
実際に「歩く」機会はトイレに行くときくらいしかありませんでした。
歩かないことで起こること
年齢とともに筋力が低下するのは避けられない事実です。
しかし「立つ・歩く」という基本動作の機会が減ると、その低下はさらに加速してしまいます。
研究でも、歩行頻度の低下は転倒リスクや日常生活動作(ADL)の低下と強く関連している と報告されています。
つまり、“歩かない生活”は「転びやすさ」や「生活の自立度」に直結しているのです。
さらに、筋力を発揮するには筋肉だけでなく「神経の働き」が欠かせません。
別の研究では運動を行っていない高齢者では筋肉量よりも神経の伝達効率の低下が歩行能力の低下に関与している とされています。
実際に出会ったケース
今回の施設で出会った方の中には、数年前に転倒し、大腿骨を骨折して人工関節置換術を受けた方がいらっしゃいました。
筋肉を触ると張りがなく、柔らかくペタッとした状態。
歩行時には重心が前に傾き、畳の上をスリッパで擦るような「すり足歩行」になっていました。
実際、人工関節手術後の研究でも、筋肉の萎縮だけでなく神経-筋機能の回復不足が歩行に影響する と報告されています。
今回目にした歩き方は、まさにその典型例でした。
まとめ:歩くことは最大のリハビリ
今回の経験を通じて改めて強く感じたのは、
「歩く機会を失わないこと」こそが高齢期における最大のリハビリである ということです。
歩行は単なる移動手段ではありません。
全身の神経や筋肉を総合的に活性化する大切な動作です。
そしてこれは、高齢期に限ったことではありません。
まだしっかり歩けるうちに積極的に歩いておくことが、いわば“健脚の貯金”になり、将来の健脚寿命を大きく左右します。
買い物で一歩多く歩く、家の中で立ち上がる回数を増やす──そんな小さな積み重ねが、将来の大きな差につながります。