「専門家」と名乗ることへの違和感

開業当初、私は「股関節痛専門」と掲げてスタートしました。
しかし、その看板に違和感を覚えるまでに半年もかかりませんでした。

理由はとてもシンプルです。
当時の私を客観的に見たとき、とても「専門家」と胸を張れるレベルではなかったからです。


基礎医学と臨床とのギャップ

私は柔道整復師の資格を持ち、解剖学・生理学・病理学といった基礎医学を学んできました。
けれども、その多くは国家試験を通過するために必死で暗記した知識でした。

臨床の現場に立ったとき、暗記しただけの知識では、患者さんの前で役に立たないことを痛感しました。
「知っているつもり」と「実際に役立つ知識」との間には、大きな隔たりがあったのです。


忘れられない言葉との出会い

そんな折、あるセミナーで講師の先生が口にした言葉が、今も私の原点となっています。

「人は、自分の知っている範囲でしか患者さんを見ることができない」

この言葉に、私はハッとしました。
自分の世界の狭さを突きつけられたようで、深く胸に刺さった瞬間でした。


今、私が大切にしていること

その経験を経て、私は「専門」という看板よりも、
患者さん一人ひとりの背景や体の状態を幅広く見られるようになることを大切にしています。

股関節機能回復Labo.では、
「股関節」という入り口を通して全身のつながりを探り、
患者さん自身が前向きに回復していけるサポートを続けています。