痛みが残っていても「成功」と判断される理由

股関節痛に対する保存療法というと日本では「痛みが取れたかどうか」が治療効果の基準になりがちです。しかし海外の研究や臨床報告を見ていくと評価の軸は必ずしも痛みそのものではありません。

近年の保存療法では、
・日常生活動作がどこまで行えるか
・歩行速度や歩行距離
・階段昇降や立ち座りの安定性
・活動量の維持・向上

といった「機能的な指標」が重視されています。
痛みが完全にゼロでなくても、生活の質が維持・改善していれば「治療は成功」と判断されるケースが少なくありません。


海外研究に見る保存療法の評価指標

欧米を中心とした股関節疾患の研究では、VAS(痛みの数値評価)だけでなく、HOOS(Hip disability and Osteoarthritis Outcome Score)やWOMACなどの機能評価スコアが頻繁に用いられています。

これらの指標は、
・痛み
・関節のこわばり
・日常生活動作
・スポーツやレクリエーション
・生活の質

を包括的に評価するものです。
つまり、痛みは評価項目の一部であり、全体像ではありません。

実際、保存療法によって痛みの数値は大きく変わらなくても、歩行能力や活動量が改善した症例は「良好な結果」として報告されています。


なぜ「痛み」だけを基準にすると判断を誤るのか

痛みは非常に主観的で、その日の体調、睡眠、ストレス、心理状態によって大きく変動します。
特に慢性の股関節痛では、構造的変化と痛みの強さが一致しないことも珍しくありません。

海外の保存療法では、
・多少の痛みがあっても動けている
・活動を続けることで機能が維持されている
・痛みへの過剰な恐怖が減っている

こうした変化を重要視します。
痛みをゼロにすることだけを目標にすると、かえって動きを避け、機能低下を招くリスクがあることも指摘されています。


保存療法の成功例に共通する考え方

海外の成功例を整理すると、共通しているのは以下の視点です。

股関節を「局所の関節」としてではなく、
骨盤、脊柱、体幹、下肢全体の連動の中で捉えていること。

また、
・完全な安静を勧めない
・痛みの許容範囲内で動作を継続する
・長期的な機能維持を最優先に考える

こうした方針が一貫しています。
短期間で痛みを消すことよりも、「この先も動き続けられる身体」を作ることがゴールになっています。


股関節保存療法を考えるうえで大切な視点

保存療法は「手術を避けるための消極的な選択」ではありません。
海外では機能評価を軸に据えた積極的な治療戦略として位置づけられています。

痛みだけに振り回されず、
・今できている動作は何か
・改善している機能はどこか
・生活全体として前進しているか

こうした視点を持つことで保存療法の価値は大きく変わります。


まとめ

海外の保存療法の成功例が示しているのは、
股関節痛の評価は「痛み」だけでは不十分だという事実です。

機能を基準に身体を見直すことで、
痛みと上手に付き合いながら、長く動ける状態を維持することは十分に可能です。

股関節痛に対して不安を感じている方ほど、
一度「痛み以外の変化」に目を向けてみる価値があるのではないでしょうか。