1. はじめに
脳震盪は一時的な脳機能障害と考えられがちですが実際には時間が経過してから症状が現れるケースも少なくありません。特に繰り返し脳震盪を受けた場合、慢性的な神経障害を引き起こすリスクが高まります。本記事では脳震盪の長期的な影響と中枢神経を賦活する手法の一つとして注目される振動療法の可能性について解説します。
2. 脳震盪の後遺症──時間経過後に現れるリスク
1) 認知機能の低下
脳震盪を受けた数年後に記憶力や判断力の低下を訴えるケースが報告されています。特にCTE(慢性外傷性脳症)の発症リスクが高まり認知症につながる可能性が指摘されています。
2) 精神的な症状(不安・うつ・感情の不安定さ)
脳震盪後にうつ病や不安障害を発症する人も多く、特に運動選手の引退後に精神的な問題を抱える例が増えています。これは脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることと関係しています。
3) 慢性的な頭痛やめまい
脳震盪後症候群(PCS: Post-Concussion Syndrome)として、数か月から数年にわたって頭痛やめまいが続くことがあります。これは脳の神経ネットワークの機能低下や血流の変化が関与していると考えられています。
4) 運動機能への影響
脳震盪後にバランス感覚が低下し、転倒リスクが上昇することが報告されています。神経の損傷により運動制御機能が低下する可能性があります。
3. 中枢神経の賦活を目的とした振動療法の効果
1) 振動療法とは?
振動療法は特定の周波数の振動を身体に伝えることで筋肉や神経系を刺激し機能回復を促す手法です。近年、神経系へのポジティブな影響が研究されており脳震盪後の回復促進にも有望視されています。
2) 脳震盪後の神経賦活への作用
- 血流改善:脳への血流を促進し、神経細胞の代謝を高める。
- バランス機能の向上:前庭系を刺激し、姿勢制御能力を改善。
- 神経可塑性の促進:脳内ネットワークの再構築を助け、認知機能や運動機能の回復を支援。
- 慢性疼痛の軽減:振動が痛覚神経に作用し、慢性的な頭痛や神経痛を和らげる可能性。
3) 海外の研究と臨床試験
- 2020年の研究(Neurorehabilitation and Neural Repair誌)では振動療法が脳震盪後のバランス改善に有効であることが示された。
- 2022年の研究(Frontiers in Neurology誌)では脳震盪を受けたアスリートに振動療法を適用したところ、認知機能や運動機能の回復が早まったと報告された。
4. まとめ
- 脳震盪の影響は長期的に続く可能性があり、時間が経過してから症状が現れることもある。
- 認知機能の低下、精神的な問題、慢性的な頭痛や運動機能の低下が主な後遺症として報告されている。
- 振動療法は、神経賦活を目的とした新たなアプローチとして期待されており、研究も進んでいる。
脳震盪のリスクを理解し、適切なリハビリテーションを取り入れることが重要です。振動療法は今後の選択肢の一つとして、さらなる研究が求められます。