はじめに:薬だけに頼らない時代へ
パーキンソン病(Parkinson’s Disease)は、手の震え・筋肉のこわばり・動作の緩慢化などが特徴の神経変性疾患であり、進行性の症状に対してドーパミン補充療法(薬物療法)やリハビリを中心とした運動療法が主な治療として知られています。
しかし最近では、**薬や運動以外の「第3の選択肢」**として個人的に注目しているのが「振動療法」です。
当院ではこの振動刺激を活用し、「脳幹へのアプローチ」を重視した独自のアプローチを行っています。
パーキンソン病と脳幹の関係とは?
パーキンソン病の主な原因は黒質(中脳にあるドーパミン産生部位)の神経細胞の変性ですが、それにとどまらず脳幹全体の機能低下も関与していることが近年の研究で明らかになってきました。
特に注目されているのが以下の脳幹部位です:
- 橋(きょう)や延髄:自律神経や嚥下・呼吸の制御に関与
- 前庭神経核:姿勢バランスや眼球運動に関与
- 迷走神経核:内臓機能や免疫機能にも影響
これらの領域の機能改善が、ふるえ・バランス障害・嚥下困難・便秘・うつ症状など、パーキンソン病に伴う非運動症状の緩和にもつながる可能性があるのです。
振動刺激が脳神経に及ぼす影響とは?
✅ 研究報告1:全身振動による小脳・脳幹への活性化
近年の神経科学では、「適度な振動刺激が、脳幹や小脳の活動を促進する」という報告が増えています。とくに姿勢制御や運動調整に関与する部位が活性化されることが確認されており、バランス能力の改善が示唆されています。
✅ 研究報告2:迷走神経系の調整効果
ある研究では、低周波の振動刺激が迷走神経活動を高め、心拍変動(HRV)を改善するという報告もあり、自律神経系の安定化にも寄与する可能性が示唆されています。
✅ 研究報告3:振動刺激による可塑性(プラスティシティ)
神経は刺激に応じて構造や機能を変化させる「神経可塑性」をもっています。振動療法は、筋骨格系だけでなく中枢神経にも影響を及ぼし、新しい神経回路の再構築をサポートする可能性があるとされています。
当院のパーキンソン病へのアプローチとは?
当院では、以下のような目的で振動療法を導入しています。
① 脳幹への安全かつ穏やかな刺激
頭蓋や頸部、体幹部への振動刺激を通じて、脳幹部の血流や神経伝達を促すことを狙っています。
② 姿勢・歩行の改善
前庭系への刺激により、重心の安定や歩行時のふらつきの軽減を図ります。
③ 自律神経の調整
迷走神経系へのアプローチにより、便秘、頻尿、不眠、気分の落ち込みなど非運動症状へのケアも行います。
④ 個別対応の振動プログラム
一人ひとりの症状に合わせて、刺激の周波数や部位、時間を調整しています。
薬やリハビリにプラスする“第3の選択肢”として
振動療法は、薬をやめる代替療法ではありません。あくまでも、現在の治療に“もうひとつの選択肢”として加える補完的アプローチです。
「できることがある」「まだ可能性がある」と感じていただけるよう、当院では科学的根拠と経験に基づいたサポートを提供しています。
まとめ
- 振動療法は、脳幹に穏やかに働きかけることで、パーキンソン病の症状緩和に役立つ可能性があります
- 自律神経やバランス機能、非運動症状にも影響を与えることが研究で示唆されています
- 当院では、個別対応で脳神経系の機能改善を目指したアプローチを行っています