検査では異常が見つからない不調
体調が優れない状態が続くと多くの方は医療機関を受診します。
検査によって原因が特定され、治療方針が決まる。これは医療の基本的な流れです。
しかし臨床の現場では検査では大きな異常が見つからないにもかかわらず、慢性的な不調に悩まされている方も少なくありません。
たとえば次のような症状です。
・慢性的な疲労感
・身体の重だるさ
・原因がはっきりしない痛み
・自律神経の乱れと説明される体調の波
・長く続く炎症傾向
こうした状態は決して珍しいものではありません。
ただし現在の医学の枠組みでは明確な診断名として整理しにくい場合もあります。
そのため、原因が「ストレス」や「体質」と説明されることもありますが、身体の内部では何も起きていないわけではありません。
近年の研究では慢性的な炎症や体液循環の変化が、さまざまな不調に関わる可能性が指摘されています。
身体の中で起きている「還流」という働き
私たちの身体では常に膨大な量の体液が循環しています。
動脈は酸素や栄養を運び、静脈やリンパは代謝産物や老廃物を回収します。
この循環は単純な往復運動ではありません。
呼吸、筋肉の活動、横隔膜の動き、内臓の運動など、さまざまな要素によって支えられています。
身体はこの流れによって内部環境のバランスを保っています。
つまり健康とは単に「異常がない状態」ではなく、流れが保たれている状態とも言えるかもしれません。
しかし生活の中で、この流れが微妙に滞ることがあります。
- 長時間の座位姿勢
- 過去の外傷や手術
- ストレスや睡眠不足
- 内臓機能の変化
こうした要因が重なることで体液の循環がわずかに停滞することがあります。
それは画像検査で明確に見える変化ではありません。
しかし長い時間の中で身体環境に影響を与えていきます。
静脈うっ血と炎症の関係
近年、静脈のうっ血と炎症の関係についての研究が増えています。
例えば、健康な被験者の腕に人工的に静脈うっ血を起こした実験では、短時間のうちに炎症関連物質の増加が確認されています。
この研究では、静脈圧を上昇させることで IL-6、エンドセリン、アンジオテンシンIIなどの炎症・血管関連因子が増加することが報告されています。 (OUP Academic)
また別の研究では静脈の停滞が起こると
・IL-1β
・IL-6
・TNF-α
といった炎症性サイトカインの産生が増加することが示されています。 (PubMed)
これらは免疫反応に関わる重要な物質です。
つまり、血液の流れの変化そのものが炎症反応を誘発する可能性があるということです。
もちろんこれは病気のすべてを説明するものではありません。
しかし身体の環境が免疫系に影響することを示す重要な知見といえます。
慢性不調と免疫の関係
近年、慢性炎症と免疫の関係は多くの分野で注目されています。
自己免疫疾患、慢性疼痛、代謝疾患などでは身体の免疫反応が長期的に変化していることが知られています。
慢性静脈疾患の研究でも炎症性サイトカインの増加や免疫ネットワークの変化が報告されています。 (PubMed)
このような研究は身体の内部環境が免疫の働きに影響する可能性を示しています。
重要なのは身体は単独の臓器で働いているわけではないということです。
- 血管
- 神経
- 筋肉
- 内臓
- 免疫系
これらは互いに影響し合いながら、全体としてバランスを保っています。
慢性不調は、そのバランスの微妙な変化として現れることがあります。
身体の環境を整えるという考え方
当院では、このような慢性的な不調を
身体環境の変化
という視点から捉えています。
身体のどこかに生じたわずかな滞りが循環や神経の働きに影響し、結果として不調につながることがあります。
施術では関節や筋肉だけでなく、
・横隔膜
・骨盤周囲
・内臓の可動性
・組織の緊張
などを含め、身体全体のつながりを評価していきます。
強い刺激で変化を起こすというより身体が本来持っている調整機能を引き出すことを目的とした穏やかな手技を用います。
身体は本来、環境が整えば回復しようとする力を持っています。
その働きを妨げている要因を少しずつ取り除くことで長く続く不調が改善していくことがあります。
原因不明の不調に対するもう一つの視点
原因がはっきりしない不調は決して珍しいものではありません。
そしてそれは必ずしも「原因が存在しない」という意味ではありません。
現在の医学でまだ十分に説明されていない身体の変化が、その背景にある可能性もあります。
身体の流れに目を向けること。
内部環境を整えること。
こうした視点は慢性不調を理解するためのもう一つのアプローチになるかもしれません。
当院ではそのような視点を大切にしながら、身体の状態を丁寧に評価し施術を行っています。